鍼灸について

✳はりとお灸について

当院で使用する「はり」はすべてディスポーザブル(使い捨て)です。衛生面には十分配慮していますので、安心して施術を受けて頂けます。鍼の細さがお分かり頂けるでしょうか?左から、つまようじ、裁縫用まちばり、よく使う0.14ミリのはり、顔などに使う短い0.12ミリのはりです。

 

左は、耳ばり用等に使ったりする小さなシールにチタン製の粒が付いているものです。右は、もぐさをひねったお灸です。(大きさがわかるように五円玉に乗せています。)

 

お灸については、肌に直接ではなく、肌の上に紫雲膏と呼ばれるクリーム状のものを台にして、その上にもぐさを米粒くらいにひねったものを乗せて、お灸していきます。「温かくて気持ちいい」くらいなので安心です。

 

✳東洋医学(鍼灸)について

・東洋医学(鍼灸)について基礎的なことをご紹介します。

 

東洋医学の背景には、古代中国哲学である陰陽学説五行学説がある。

 

✵陰陽学説では、世の中に存在するすべてのもの、事象は、陰と陽というふたつの要素から成り、互いに対立、影響し合っているとしている。これを医学に応用している。

 

体表、上半身

六腑、気

相対的な興奮、亢進、活動、熱性

体内、下半身

五臓、血

相対的な鎮静、衰退、停止、寒性

 

✵五行学説とは、すべてのものや事象には木・火・土・金・水の5つの要素が含まれていて、互いに変化し、影響しあい成立しているとしている。

 

✵五行の性質

 

木・成長、発散を促す働き

火・炎上させる働き

土・すべてものも生む働き

金・収納、変革を表す働き

水・潤す、下に降ろす、冷やすなどを促す働き

 

これらの性質を医学に当てはめ、生理、病理をみるようになったというわけです。

 

✳身体は、気・血・津液で出来ている

気・血・津液とは?

 

身体が生理活動を営む源となるものである。

 

①五臓・六腑で作られる。

 

(五臓六腑とは、五臓、(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胃・小腸・大腸・胆・膀胱・三焦)のこと。※現代医学の臓器とは概念が異なる。それぞれの「機能」に付けられた名称で、現代医学よりも広い意味を持つ。)

 

②気・血は、経絡という通路を通り全身に運ばれる。

 

五臓六腑は単独ではなく、相互に関係して機能しているので、一つの臓腑の働きが悪くなると、他の臓腑にも影響を及ぼす。

→東洋医学はバランスを重視する。

 

✳病気はなぜ起こる?

✵病は気の乱れから

東洋医学では、体内の気のバランスの崩れから病気が起こると考えられている。気は血や津液を循環させているものでもあるため、巡っている気のどこかで停滞や不足などの問題が起こると、血や津液にも影響を及ぼす。

 

気の性質:上りやすい。血や津液を循環させている。

 

血、津液の性質:滞りやすい。

 

病気の原因を3つに分けて考える

東洋医学では、自然と人との関係を重視し、病気の原因を3つに分けて考える

 

①外因…身体の外(外部環境)に病気の原因がある

 

自然界には、六気(風、暑、湿、燥、火(熱)、寒)があり、常に変化し、季節とともに盛衰している。これが、急激に変化したり、大きく変化したりすると、病気の原因となる。病気の原因となった六気を風邪、暑邪、湿邪、燥邪、火(熱)邪、寒邪とよび、総称して、六淫または、六邪という。

 

②内因…内部(感情の状態)に病気の原因がある

 

東洋医学では、人間の感情を7つ(喜、怒、思、悲、憂、恐、驚)にわけ、七情と呼ぶ。これらが通常の範囲内であれば問題ないが、突然の強い感情的なショックや、大きな感情の変化、精神的なストレスなどが長期におよぶと、身体の許容範囲を超えてしまう。そうなると、気や臓腑の働きに悪影響を及ぼし、病気を発症する。

 

③不内外因…外因・内因のどちらでもないもの(飲食、外傷、寄生虫、過労、運動不足などが病気の原因である

 

暴飲暴食、不規則な食事時間、過度なダイエット、冷たいもの・辛いもの、熱いものの取り過ぎ、偏食、過労(心労=精神の疲労、考え過ぎ、心配し過ぎ、考え過ぎなど、身労=過度の肉体的な疲労、房労(性行為による疲労)、運動不足、細菌感染、病理産物(気・血・津液の乱れなどから臓腑の働きが阻害され、結果生成された、水湿、痰飲、於血)など。

 

✳鍼灸治療を可能にしている経絡、ツボとは?

臓腑と身体の表面をつないでいるのが経絡で、それが注1五臓六腑をつないでいる。身体の比較的浅い所まで出てきて、更に手足や頭の方にめぐっている。経絡は全身を網目のようにめぐっていて、その網目のような道の上にある「駅」のようなものが、経穴(ツボ)である。                                 

気や血のトラブルや臓腑の働きの失調が、経絡上のツボに表れまる。したがって、ツボに鍼や灸をすることで、臓腑の失調が改善されると考えられている。

 

と、簡単に書きましたが、治療に関してはもっと複雑です。ツボにはそれぞれ性質があり、直接その臓腑に効くとされているもの、熱を取るもの、気を補うもの、気を巡らすものなどなど。

 

どのツボを使うかは、流派によってもそれぞれ違いますので、ここでは、治療を可能にしている経絡とは?ということに関して簡単にまとめてみました。

注1「五臓六腑」とは、五臓、(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胃・小腸・大腸・胆・膀胱・三焦)のこと。※現代医学の臓器とは概念が異なる。それぞれの「機能」に付けられた名称で、現代医学よりも広い意味を持つ。

✳鍼灸の効果は?WHOの適応疾患

神経系疾患

神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー

 

運動器系疾患

リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)・関節炎

 

循環器系疾患

心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ

 

呼吸器系疾患

気管支炎・喘息・風邪および予防

 

消化器系疾患

胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

 

代謝内分泌系疾患

バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

 

生殖、泌尿器系疾患

膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎

 

婦人科系疾患

更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊

 

耳鼻咽喉科系疾患

中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎

 

眼科系疾患

眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

 

小児科疾患

小児神経症(夜泣き、かんのむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

 

皮膚科疾患

皮膚炎・蕁麻疹・ヘルペス・肝斑(シミ)・円形脱毛症

 

✦上記に示したもの全ての症状に、必ず鍼灸の効果があるというわけではなく、体調や体質によって、鍼灸が適さない場合もあります。また、ここに挙げられていない症状でも、鍼灸の効果が高いものもたくさんあります。

 

✳海外鍼灸事情

✦鍼灸は伝統的な医療です

 

明治以降、日本では、東洋医学は医療制度から外されました。また、鍼灸治療や、気功が超常現象のようにマスコミで扱われたことも誤解を招く一因であるように思われます。

 

中国では、東洋医学と西洋医学(現代医学)を両立させる制度が整っています。日本では、まだまだ東西医学の結合は進んでいないのが現状ですが、一つにこだわることなく、両方の長所・短所を理解して、両方を上手に使うことが一番ではないか?と思います。