身体のバランスは、細胞に影響する!

✦重要キーワード:アライメントとテンセグリティ構造

「骨と関節の並び(アライメント)は、筋肉に影響をあたえる」

 

「アライメント」とは、骨と関節のつながりのことです。

 

足首の上に膝がのり、その上に股関節、骨盤、脊柱がS字カーブを描き、その上に頭が乗る。そのラインがまっすぐであるのが理想ですが、完璧に真っ直ぐなアライメントの人はいません。アライメントにもその人の生活習慣などによる個性が表れます。

 

アライメントが崩れると、特定の筋肉に負担が集中してしまいます。そして、許容範囲を超えたアライメントの偏りを長年放置していると、後に、関節の障害(変形性膝関節症など)、動きの制限などが表れてきたりします。

 

ですから、O脚や、姿勢の悪さは見た目だけの問題ではありません。また、見逃しがちな足首のアライメント異常(回内足、回外足など)は、足底のアーチの異常に影響し、様々な足の問題だけでなく、膝、腰、背中の痛みなど、身体全体の様々な不調へとつながっていきます。

 

アライメントの異常は身体の「テンセグリティー構造」にも影響を及ぼします。

 

✳「テンセグリティ構造とは?」

 

テンセグリティー構造とは、圧縮力と張力によって安定する構造のことで、これは、アメリカの建築家バックミンスター・フラーによって発見されました。

 

この構造が身体にもあてはめることができるということが、立証されています。つまり、身体はテントのようであるとする考え方です。(骨がポール=圧縮部材で、筋膜や筋肉がテントのシート=張力部材)

 

アメリカの整形外科の医師D.Eイングバーの研究によると、細胞もテンセグリティー構造を持つとしています。

 

・細胞骨格から人体の骨格まで身体のあらゆるレベルでテンセグリティを利用している。

 

・骨がばらばらにならずに垂直に立ち安定しているのは、筋肉や腱、靭帯による張力があるからである。

 

・これらの張力を圧縮力に耐える骨が受け止め、全体として複雑なテンセグリティー構造を作って身体を支えている。

 

更に、その研究からわかっていることは、

 

・圧力や張力が細胞に加わった時、細胞の骨格の形状が変化し、それは瞬時に細胞全体に伝わり、吸収される。よって、ある組織のこわばりや、収縮は他の組織にも影響する。したがって、特定の組織の柔軟性や可動性の改善すると、その効果は、他の組織にも影響する。

 

つまり、「全身の張力のバランス」は、身体の細胞のバランスにも影響を及ぼしているということです。

 

また、精神的なバランス、細胞のバランス(内臓)、筋肉、骨格のバランスは全て、切り離せないもの、相互に影響し合っているので、どこか一つのバランスが崩れると、全体に伝わるということです。

 

身体の凝りや痛みは、身体の「テンセグリティー構造」のどこかにねじれや偏りがあるというサインです。

 

また、身体の張力部材(筋肉や筋膜)の張力のバランスを整えると、内部にある圧縮部材である骨のアライメント(骨と関節のつながり)が修正されます。

 

この身体の「テンセグリティ構造」を整えることに有効なのが、「筋膜リリース」や、「アライメント調整」なのです。

 

凝りや、痛みは「テンセグリティ構造」や、「アライメント異常」のサインかもしれません。身体が発してくれているサインを見逃さない。原因をみつけて対処することが大切です。

 

✦重要キーワード:筋膜

 

「筋膜」とは、近年、世界的に研究が進む、身体の専門家が注目している、最重要キーワードの一つです。

 

身体は水の入った袋のようなもので、この袋を筋膜といいます。筋膜は何層もありますが、すべてがつながっています。硬膜も筋膜とつながっています。皮膚も筋膜とつながっています。筋膜は三次元的につながったボディースーツのようなもので、第二の骨格とも呼ばれています。

 

(「筋膜」というと筋肉の外側の膜と捉えがちなので、正確には単に「膜」であり、内臓を包む腹膜、脊髄を覆う硬膜、小脳を載せる小脳テントなども、広い意味ではこの「膜」に属します。ここでは、広い意味の「膜」をなじみ深い「筋膜」と呼びます。)

 

正常な筋膜は、しなやかで弾力がある半流動体の物質で、すべての筋肉繊維や器官を包んでいて、地球の重力や、日常に起こる様々なストレスなどを吸収し、身体のバランスを取ろうとしています。

 

ところが、事故やけが、精神的ストレス、偏った生活習慣、老化などによって水分を失うと、柔軟性がなくなり固くなったり、ねじれて萎縮したり、出っ張ったりしてしまいます。

 

そうなると、隣接する筋肉の動きが制限され、血液循環が悪くなり、凝りや痛みを生むことにつながります。

 

また、筋膜には神経、血管、リンパ管などが通っているので、ねじれなどがあると、これらの機能が阻害されてしまいます。

 

この結果、慢性的な身体の痛みや不快感、柔軟性の低下、運動能力の低下などが起こってきます。

 

また長期的に身体のバランスが崩れると、アライメントの異常にもつながります。アライメントとは、骨と関節とのつながりのことで、アライメントに異常が起こり姿勢が乱れると特定の筋肉に負担が集中してきます。

 

地球の重力は身体を傾いている方向へ引っ張るため、それを支えるための圧力が常に筋肉や筋膜にかかることになってしまい、日常で身体をまっすぐに保っていることにさえ身体的エネルギーを使わなくてはならなくなります。

 

また、本来、別々の働きをする複数の筋肉が一体化してしまうため、身体が本来持っている動きの効率性を低下させてしまいます。

 

それらは、身体の不調の原因やエネルギーの消耗となるばかりでなく、その人の行動、心理、感情などにも影響を与えてしまいます。

 

身体は、元の正常な状態のバランスに戻ろうとしますが、習慣となってしまったアンバランスは、元々の原因である怪我やストレスなどが無くなったとしても、なかなか元には戻りません。

 

単に筋肉をほぐしたり、ボキボキと矯正したりしても、全体的には歪んだままで、遅かれ早かれまた、元のアンバランスな状態に戻ってしまいます。

 

そこで、全身の筋膜に対して、様々な側面からのアプローチが必要となります。

 

当治療室では、鍼灸、整体やオステオパシーの手技、軟部組織のモビリゼーション(STM)、筋膜リリース、隔膜リリース、クラニオセイクラルワーク(頭蓋仙骨療法)などを用いて、アライメントや筋膜に対してアプローチしています。

 

通常、1~3回で変化が出てきますが、習慣となってしまった身体のアンバランスが改善されるには、多少時間がかかります。

 

また、個人差や問題の大きさ、身体の柔軟性なども関係するので、一概に何回でどの位変化がみられるとは言い切れません。良くなった後も、健康維持のため、病気を未然に防ぐためにも、時々治療をしておくことが最善です。

 

筋膜の調整や頭蓋の治療が有効な疾患には、次のようなものがあります。

 

✦乳幼児の疾病 感情の問題

✦脳と脊髄の外傷による損傷 顎関節の問題

✦頭痛 学習障害(LD)

✦慢性的な疲労 ストレスによる問題

✦運動協調性疾患 外傷後のストレス疾患

✦身体全身の理由が不明の疼痛 筋骨格系の問題

✦側彎症 内臓の問題

✦中枢神経の疾患    

✦ホルモンのアンバランス

 

筋膜の調整は、局部の痛みを取り除いたり、病気の「治療」を目的とする対症療法的なものではありません。しかし、身体のバランスを改善してゆく過程で、慢性的な腰痛や肩凝り、頭痛、歯の噛み合わせの異常など、身体の構造の歪みやストレス状態が原因となって生じている症状が改善されて行きます。

 

身体に生じる歪みや緊張は、大部分は感情や心理的なものが原因であるとも言われています。ですから、身体の緊張がほぐれてくると、精神的な緊張もほぐれてゆきます。